こんにちは、たなけん院長です。
彼は私が勤めていた病院にたまたま、大学の都合で赴任してきた当時、医師になって7-8年目の若い先生でした。
噂には大学ではまずまずの評判で良く出来る若者であるということだったので下にだれも若い先生がいなかった私は仕事を手伝ってもらえるとかなり期待していました。
ところがその若い先生は噂とは違い、かなり手のかかる子でした。
申し訳ないですが大学という大きな組織に属しているのと民間病院に属しているのとではまるで勝手が違い、一つ一つ、教えていかなければならなかったので
まぁ、来たばかりのこの若者を怒って、叱りました。
手術の指導はもちろんのこと、日常業務での周りのスタッフとの連携の仕方など気になればその都度、指導しました。
私もまだ40代と若かったので指導というよりは怒っていました。
「お前、ええ加減にせえよ」や
「しっかりやらんかい」など今では確実にアウトでしょうね。
しかし、当の本人は見た目は平然としているので逆に心配になって、ある日、こんなに怒られてばかりいたらイヤになるでしょ?と
その辺のところを彼に聞いてみたら意外にも彼はこう言いました。
「ボクは一人前になるためにここにきたので仕事を覚えるまでは怒られて当然と思っているし、怒られないとダメだと思っているので全然、平気です。」
と言って、その後も怒られても平然として日々の業務をこなしていき、もともと優秀な彼はすごいスピードで成長し、わずか2-3年で我々と遜色ないレベルの医療活動が出来る様になっていました。
普通の社会ではこんなことは日常茶飯事と言われるかもしれませんが医者という人種は違います。
医者なるような人種は幼い頃から優秀なので、はっきり言って怒られることに慣れていない人が圧倒的に多いです。
これだけ怒られたら仲が悪くなって辞めるか、もしくは同じ病院にいても全くしゃべらなくなるのが普通ですが彼はメゲて疎遠になるどころか泰然自若としてヒョウヒョウとしていました。
2-3年もするとむしろ頼もしい存在となり、彼には逆に頼りっぱなしです。
私の首と腰の手術はもちろん、彼にしてもらいました。
なので今では彼に頭が下がりっぱなしです。
私はあまり同業者のことを褒めたりすることがないのですが唯一、私が認め、尊敬する医師の数少ない一人です。手術の腕なら東海地方でもグンを抜いていると思います。
彼と接して人を指導、教育するということはとても難しいことですが
” ただ、ただ、患者さんのためであるとはどういうことか ” を理解し、行動してくれるまで根気よく、伝え続ける 、ただし、怒らないようにね!です。
指導される子達はみんな、うまくなりたい、一人前になりたいと思っています。
しかし、いつも誰しも彼のようにしっかりしてはいないし、メンタルが図太い子ばかりではありません。
指導する人間が感情にまかせて怒り、怒鳴って教えることはチョー簡単です。
しかし、それには受け手の子達のメンタルと素質に頼らなければなりません。みんなそんなにメンタル強くないし、すごい素質もありません。
私は彼という部下を持って気づきました。
指導者も怒鳴る、怒るなんて簡単な指導法なんかやっていると自分自身のレベルが下がるし、なにより若い先生は指導者を心の中で軽蔑し、言うことを聞かなくなります。
怒らずに人に教えると言うことは無茶苦茶、難しいことです。院長になった今はもっと苦労してます。トホホ
未熟な先輩が立派な後輩から学んだというお話しでした。