こんにちは、たなけん院長です。
医者を長いことしている誰誰しも、どうしても忘れられない患者さまがいらっしゃいます。
それも概ね、調子の良かった患者さまより調子の悪かったり、うまく治療が出来なかった患者さまのほうがいつまでも記憶に残っているものです。
私が30年医者をやってきてどうしても忘れられない方は岐阜県の高鷲町 (スキーで有名なところです) にお住まいだった患者さまです。
今でも高鷲町を高速道路で通るたびに必ず、思い出します。
20年以上前のまだ私が脊椎手術をし始めた駆け出しの頃に出会った当時、80歳をこえた女性で本当に人のいい田舎のおばあちゃんといった人でした。
その方は腰が悪かったために足の痛みしびれにお悩みで私に治療を任せて下さったのですが私の未熟な手術技術のために左脚に痛みとしびれが残っていまいました。
さぞ、お辛かったであろう後遺症を一緒に長年、治療したのですがご自宅が高鷲町ということもあり、街からかなり遠いために通院が次第に困難になり、ついには来院されなくなってしまいました。
普通なら手術がうまくいかなかった医者である私に苦情や不平不満を言ってもおかしくないのに
いつも若かった私に 「こんなふうになったけどこの先生は本当によくしてくれるから感謝しているよ。」
と言って下さるのでそのたびに申し訳ない気持ちでいっぱいになり、絶対に二度と同じ轍は踏まないと誓ったことを昨日のことのように思い出します。
だからそれ以来、私は 医者は患者さまを救っているようでじつは患者さまに助けてもらっているのではないか? と思うようになり、
今日、手術がうまくいったのはじつは自分の手術がうまいからではなく、手術しやすい患者さまだったからではないだろうか?、たまたま、運良く、うまく出来ただけではないだろうか?
つまり、うまくいったのは患者運が良かったからじゃないだろうか? うまくいくor いかない などは紙一重のちょっとした差ではないか? と自然に考えるようになりました。
じゃあ、どうしたらそういう患者さまに出会うことができて、紙一重でうまくいく様になるのだろうかと考えたときに整形外科の神様に好かれるためには
” 学会発表のため、自分のため、そうじゃなく、ただただ、目の前の患者をどうやったら満足させられる治療が出来るのか、一番いい方法は何かということだけ、ひたすらにマジメに実直にやろう、すくなくとも自分の技術にはウソをつかないようにしよう。うまくいった、いかないをきちんと患者さまに伝えよう。うまくいかなったと患者に伝えたくなければしっかりとした手術ができるように懸命に努力しよう! ”
そうすれば整形外科の神様に好かれて、いい患者さまを私の前に導いてくれるんじゃないかと思って、20年以上、やってきました。
気がつけば、今ではそんな私を頼っていろいろなところから患者さまがいらっしゃいますがすべてはあの人が気づかせてくれて始まった脊椎外科という修行、苦行の日々。
あの方はいらっしゃいませんが、高鷲町を車で通るたびに心の中で深くお辞儀をして自然と若い頃に誓った初心を思い起こしています。
何十年たっても治療がうまくいかなかった患者さまの事は頭から離れられないものなんです。