こんにちは、たなけん院長です。
開業する前に勤めていた病院で数年間、ある患者さまの診察を受け持っていました。
86歳になるいわゆる ”人の良さそうなおばあちゃん” といった方の口癖は
” こんなに痛いんなら早く死にたい ”
でした。
最初の出会いは腰と膝が悪く、他院でずっとお薬だけ処方されていましたがいつもよりも痛みが強くなったと初めて来院され、注射をして差し上げたところ調子が良くなって以来、毎週、注射を差しにくるようになりました。
当時、私は手術をメインにしていたので通常、経過を診るだけの患者さまはご近所のクリニックに紹介する事にしていたのですが毎週、注射をするだけに通院させることは異例中の異例な事でした。
しかし、気がつけば数年間、毎週注射にいらっしゃるようになり、見た目もホントに感じのいい、優しそうなおばあちゃんだったのでついつい、なんかしてあげたくなるような方でした。
その口癖の ” こんな痛いんなら早く死にたい ” を言われる度に毎週、励ましていると次第に患者さまから
「ここに来たら、また、1週間なんとかなります。」
と言われるようになり、それを聞いている内に私は患者さま達は体が痛い事もさることながら
” 不安 ” 、 ” 恐れ ” 、 ” 心配 ”
で病院にいらっしゃるのではないか、困っているのではないかと感じました。
それは手術では治せないけど、医者がただ話を聞くだけで気が休まり、症状が軽くなることもあるんだなとこの歳になって気づかされました。
だから、いつも外来では「様子をみてください」とは伝えず、できるだけ、しっかりとした診断、治療法の提案をするように心がける様になりました。
ただそうはいっても簡単にできることではないのですが、、、
私は手術が得意です。
医者に成り立ての頃は手術がうまくなりさえすれば、患者さんを救う事が出来ると思っていました。
だから手術のうまい先生に憧れ、 ”ああなりたい” とずっと頑張ってきました。
しかし、うまくなればなるほど ”手術がうまいだけ” では全然ダメだという事をこの患者さまに教えてもらいました。
人の体と心を治すのは簡単な事じゃない!
〇〇さん、今、病院に私はいませんがお話し聞いてもらっていますか? 今日も泣いていませんか? 心配してます。