こんにちは、たなけん院長です。
今日は患者さまのご家族を1人、ご紹介いたします。
その方は重度の認知症を患っている96歳の女性の息子さんでお母様は骨粗鬆症の治療のために長いこと、月1回来院されます。
息子さんはそれを何十年と病院に付き添い、ご自宅では献身的にお母様の面倒をたった1人で診ておられます。
ご兄弟もいらっしゃるのですが息子さんが1人で何十年と身の回りのことをしておられていました。しかもお母様は重度の認知症なので息子さんの顔も誰の顔も全く分からないのです。
数ヶ月前に息子さんが珍しく、一緒にいらっしゃらなかったので付き添いのご家族にお聞きしたら息子さんは最近になって、体の調子が悪くなり、病院を受診したら、末期の膵臓ガンが見つかり、治療が大変でお母様の付き添いにこれないとのことでした。
「本人はどうしたらいいのか、分からないし、担当の先生は頼りないと言って落ち込んでいるし、家族もどうしたらいいのか?本当に困った」
とご家族がおっしゃっていたので私はこうアドバイスさせてもらいました。
「息子さんの悩みはとにかく、 ” 死ぬことが怖いのではなく、お母さんより早く死ねない” その一心ではないかと思います。だから少しでも延命するにはどうしたらいいのかということだから、やはり膵臓ガンの権威の先生に一度診てもらって考えてみてはどうでしょう?」
とセカンドオピニオンを勧め、ちょうどタイミング良く、テレビで見たばかりの膵臓ガンで有名な病院と先生を紹介し、さらにお節介にも紹介状も作成してお渡ししました。
それからしばらくしてそんなことも忘れていた頃に、その息子さんがひょっこり私のクリニックに治療がつらいにもかかわらず、わざわざお見えになって
「先生、紹介してくれた偉い先生に診てもらってきたけど、手術のしようがないし、あと余命3ヶ月っていきなり言われちゃったよ。」
「でもね、それ聞いたらなんか変に吹っ切れて、開き直っちゃったわ!ワシ、どんな治療でも頑張るわ、それより、先生がワシの気持ちをズバリ言ってくれたの聞いてホント、嬉しかったよ!」
そのときには自分が何を言ったのかもよく覚えていなかったのですが、長いこと医者をやっていると自分が言った事が思いもよらず、いい結果が出るときもあれば、悪い結果につながることもあり、驚かされることが多々あります。
このように医者の言葉は毒にも薬にもなるので、いつも常に気をつけなければならないのですが
患者さんとお話しするときに私が一番、気をつけていることは
絶対にイライラしたり、怒ったりといったネガティブな気持ちで患者さんと接しないこと、必ず気持ちは言葉に乗り移るから
です。これ絶対です。